SpaceXのCrew Dragonがスペースステーションにドッキング成功!!!
このドッキングの裏には、宇宙での「規格」を巡る、ちょっと面白いウンチクがあります。
実は、Crews Dragonは「アダプター」を2つ介してスペースステーションにドッキングしています。規格を合わせるためです。
「規格」といえば、最近ではBlue-ray Discの規格戦争を思い出すでしょうか。いろんな会社が作ったディスクを一つのプレーヤーで再生できるのは、規格がちゃんと設定されているからですね。
スペースステーションは複数のモジュールがドッキングして作られた構造物です。そこには様々な国の様々な船が訪れます。そこで、ドッキングポートを「規格化」する必要が出てきたわけです。
最初の規格はCommon Berthing Mechanism (CBM)。これは西側(アメリカ、日本、欧州)のモジュール間を繋ぐポートの規格です。きぼうのポートもこれ。さらに、無人補給船である日本のHTV、SpaceXのドラゴン、OrbitalATKのシグナスのポートもこの規格です。(ヨーロッパのATVはロシア側のポートを使用。)CBMは結構大きくて、ISSの実験機器などのラックが通れる大きさに設計されています。ちなみにラックの大きさにもInternational Standard Payload Rack (ISPR)という規格が設定されています。
次の規格はAPAS-95。これは1975年のアポロとソユーズのドッキングミッションのために設計されたAPAS-75に起源を持ちます。この歴史的な、史上初のアメリカとソ連の宇宙船の軌道上ドッキングのために使われたAPAS-75は、後に改良され、ロシアの宇宙ステーション・ミールとアメリカのスペースシャトルがドッキングするための規格APAS-95となりました。後にアメリカ主導の宇宙ステーション計画にロシアが加わった際、西側とロシア側のモジュールの結合のためにAPAS-95が使われることになりました。その際、西側モジュールは全てCBMでしたので、それをAPAS-95と繋ぐアダプターが必要になります。それがPMA (Pressurized mating adapter)で、全部で3つあります。その最初のもの、PMA-1が、西側のUnityモジュールとロシア側のザーリャモジュールを繋いでいます。
スペースシャトルがISSを訪れる際も、ドッキングにはCBMではなくAPAS-95を使いました。おそらくCBMが大きすぎたんじゃないかな。残りの2つのPMA – PMA-2とPMA-3 – は、スペースシャトルとのドッキングに使われていました。
さて、シャトルの退役が間近に迫った2010年、新たに国際的なドッキングポートの規格が設定されました。それがInternational Docking System Standard(IDSS)です。IDSSは自動ドッキングにも対応し、ただ人員が通過するだけでなく、電源、データ、空気なども宇宙船間でやりとりできる規格です。今回ドッキングしたSpaceXのCrew Dragon、BoeingのCST-100が、IDSSに対応した初の宇宙船になりました。
これらの宇宙船に対応するため、使われなくなったPMA-2, 3のAPAS-95ポートをIDSSに変換するためにアダプターが加えられました。それがInternational Docking Adapter (IDA)です。つまり今回のドラゴンは、アダプターを2個介してドッキングしたんですね。ちなみに今回使われたIDAは、以前にSpaceXの貨物用ドラゴンで運ばれたものです。
まあそんなわけで、宇宙の利用が広がっていくと、規格化が大事になるんだよ、という話でした。