ロケット打ち上げの適地とは?

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こんなニュースがあって、

https://www.sankei.com/premium/news/181027/prm1810270016-n1.html

News Picksに詳しいコメントを書いたら字数制限の1,000字を大幅オーバーしたので、全文をこちらに載せます。

ロケット打ち上げは地理的要因に大きく左右されます。具体的には以下の三つ。
①東、南、北のいづれかの方角に大きくひらけていること
②①が満たされた上で、できるだけ緯度が低いほうが有利
③漁業など他の産業と干渉しない

①は絶対に必要な条件。ロケットは基本的に東向きに打ちます。地球の自転方向と同じなので、そのほうが少ない加速で宇宙速度に達することができるから。加えて太陽同期軌道など北極と南極の近くを通るような「縦」の軌道、すなわち極軌道も、地球観測、偵察、GPSなどで有用。この場合は北または南打ち(どちらでもいい)になります。西には普通は打ちません。地球の自転に逆らうので。

そういう目で見ると、日本列島は基本的に東と南がひらけているので、打ち上げ基地を作るのに非常に適した場所なのです。2方向に開けた適地は、実はそうそうありません。

アメリカはなぜ、フロリダとカリフォルニアの2箇所に発射場があるかというと、フロリダは東、カリフォルニアは南にしか打てないから。

ヨーロッパの宇宙港は、ヨーロッパでではなく、南米のフランス領ギアナにあります。ヨーロッパ本土は西に向いているので適地が少ない。ギアナは東と北に開けているうえに緯度も低い。実はここが地球上最強の打ち上げ地に近い。だから最近はロシアのソユーズもギアナから打ち上げられていたりします。

中国やロシアは広大な砂漠や無人地帯があるので、それを海のかわりに使っています。

北朝鮮や韓国もロケットを打ち上げていますが、朝鮮半島はロケット打ち上げに向かない。東と南が日本列島にブロックされ、北も空いていないので。なので韓国が昔人工衛星を打ち上げたときは、日本海に沿ってクネクネ曲がって飛ぶ、非常に燃料効率の悪い軌道を選択するしかありませんでした。北朝鮮は構わず日本列島の上を飛ばしましたね・・・・・(冷汗)

イスラエルは西にしか海が開けていない上に都合の良い海外領土もない。そこで仕方なく、地球海に向けて西打ちしています。これが僕の知る限り唯一の西うちの事例じゃないかな。

そんなわけで日本列島の地の利は実はものすごい僥倖。だから、イスラエルや韓国みたいに地理的に恵まれていないが宇宙開発をしている国に、射点を貸すという事もしたらいいんじゃないかな。日本は地理的には「世界の宇宙港」を目指せる絶好の位置にあります。が、日本の一番の問題は、後ほど説明する③ですね。

②ではなぜ緯度が低いほうがいいのか。同じ軌道に載せるにも、低緯度から打ち上げるほうが燃料が少なくてすむ、つまりコストが下がります。理由は二つ(1)東うちの場合、低緯度の方が地球の自転速度が速い、(2)その緯度よりも低い軌道傾斜角に打ち上げる場合、宇宙に出た後に軌道修正が必要。特に(2)がしんどいです。なぜ国際宇宙ステーションの軌道傾斜角が52度かというと、あれはロシアの打ち上げ場があるバイコヌールの緯度に合わせたからですね。種子島、内之浦、ギアナ、フロリダ、カリフォルニア、みんなその国のできるだけ低緯度地方に作るのはそのため。

③実は日本はこれがきつい。打ち上げの際には広大な海域をブロックする必要があるので。歴史的に日本では海は漁師のもの。種子島も地元の漁師たちと交渉して、一年のうち何日は打ち上げに使って良い、という合意をします。

さて、大樹町。①は申し分ないが、②が鹿児島や沖縄に比べ不利。その分を③でカバーできているか、ということでしょう。聞いた話だと、地元が非常に協力的なのだとか。そういう要因は大きいです。

ちなみに記事の見出しの「日本初」というのは意味がない。単に種子島と内之浦に「宇宙港」という名前が付いてないだけ。ロケットの打ち上げ場としては日本で3つ目ですね。純粋に言葉の問題です。打ち上げ場と滑走路の両方があるという意味かもしれないが、現状では両方使う機体はないのでこちらも意味があまりないです。やはり、地元の理解、というのが一番大きいんじゃないかな、と。

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