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なぜ基礎研究に「血税」を使うのか?

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毎年、世界で約100万本の学術論文が世に出る。研究費の大部分を出しているのは、日本ならJST (科学技術振興機構)、アメリカならNSF, NASAや軍といった、国営機関である。その元手は、もちろん国民の「血税」だ。JSTの年間予算は1200億円、NSFは70億ドル(約8000億円)である。

100万本の論文のうち、いったい何%が未来にインパクトを与える研究か。おそらく、0.1%もないだろう。残りの論文は、ほとんど読まれることなく忘れられる。

税金の無駄、そんな批判が聞こえてくる理由も分からなくもない。国が予算を削るときに基礎研究が真っ先にターゲットになるものわかる。

だが、ごくごく稀に、世の中を根底から覆すような論文が出てくることがある。

1998年に”The Anatomy of a Large-Scale Hypertextual Web Search Engine”という学会論文が発表された。現在までに約1万5千回も引用されているこの有名な論文の著者は、二人のスタンフォード大学の博士学生だった。名をセルゲイ・ブリンとラリー・ページといった。

どこかで聞いた名前ではなかろうか?

そう、かの誰もが知るIT企業の創業者だ。

そしてこの論文で発表された検索アルゴリズムの名こそが、「Google」だったのである。

彼らの研究に研究費を出したのは、NSF、軍 (DARPA) と、NASAだった。Googleは、税金を使った研究から始まったのである。

例えるなら、基礎研究とは果物の品種改良のようなものである。何千、何万もの株をランダムに交配してひとつひとつ味見する。ほとんどは失敗作である。だがごく稀に、今まで味わったことのない美味な実がなる株ができる。それが新たな品種となる。

イノベーションの最上流に位置する基礎研究において、大当たりが出る確率は宝くじのようなものだ 。研究者がバカだからではない。世界最高の頭脳をもってしても、10年後、100年後に世の中を変える技術を予測することは極めて困難だからだ。「iモード」に夢中だった15年前の携帯ユーザーの誰が現在のスマートフォンの時代を予想できたか?宇宙といえばNASAやJAXAだった10年前に、誰が現在のSpaceXの躍進を予想できたか?

だから、「何の役に立つかわからない研究に国民の血税を使うなんて」という批判は、少なくとも科学技術においては完全に的外れである。

役に立つことがわかっていて、費用対効果や収益が望める技術なら、民間がやればいい。民間ができることに税金を使うことこそ、最大の無駄である。

民間にできないことをするのが、国の役割なのだ。

一万の株を試す根気がなければ、決して美味な果実は得られないだろう。

無知な批判に屈して基礎研究への投資を渋る国からは、未来のGoogleやSpaceXは生まれないだろう。

国の役割とは、民間には取れないリスクを取ることなのである。

(この記事は、NewsPicksに寄稿した記事「民間宇宙開発の時代における、NASAやJAXAの役割とは?」のために書いたものの、字数の関係で削除した部分を掲載したものです。)

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