日本の就活にひそむダークサイドについて警鐘を鳴らす小野氏。マスクに特に意味はない。

【MITの就活】日本の就活にひそむダークサイド~情報サイトより、自分の心の声を聞け!

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人生というのは、どのくらい無我夢中の時間を過ごせるか、で決まると思う-大島渚

東大・早慶の就活」という特集がNewsPicksで組まれていますが、うーん、単刀直入に言って、どうも視野の狭い記事が多いなぁ、と感じます。まず、対象がとても限られた業種(総合商社、コンサル、金融、広告など)に偏っている。そのような業種から内定を勝ち取った学生が、「内定王」やら「特A層」などと野暮ったい肩書きを付けられて、就活戦線の攻略法などを語らされています。

いや、そりゃあ商社マンもコンサルタントももちろんやり甲斐があってカッコいい仕事でしょう。それに何の異論もありません。でも、やり甲斐があってカッコいい仕事は他にもいくらだってあります。とりわけ、日本は苟も科学技術立国を名乗っているのだから、もし技術者や科学者や研究者がどれだけやり甲斐があってカッコいい仕事なのかが学生さんたちに伝わっていないなら、それはとても寂しいことだなあ、と思うのです。

でも人様が書いた記事をネチネチと批判しても何も始まりません。NewsPicks が僕をインタビューしてくれる気配も残念ながらありません。ならば自分で書いちゃえ!と思い立ったわけであります。

実は僕にも迷いの時期がありました。MITの博士課程にいた間の一時期なのですが、その頃はコンサルや金融に就職活動をしていました。だから、そのような業種に惹かれる学生さんたちの気持ちもよく分かる。その後、ある魂を揺さぶられる経験をしたのがきっかけで、一度きりの人生なんだから、誰が何と言おうと自分の夢を追うべきだと思い直し、今に至ります。

そんなわけで自作自演インタビュー!僕の記憶の中から、迷いのドツボにいた2010 年の自分を呼び出して、今の自分をインタビューしてもらうことにしましょう!2010年、まだ27歳のピチピチの自分よ、出てこ〜い!!

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2010年の小野氏(右)が、2016年の小野氏(左)に、就活の極意について直撃セルフインタビュー!!マスクをかぶっているのは、単にスター・ウォーズが好きなだけ。
NASAの就活、技術者のお仕事

小野(2016): やあ、久しぶり。

小野(2010): おいおい、急に何だよ。「暗黒時代」の自分は封印したんじゃなかったのかよ。

小野(2016): それに向き合う心の準備ができたってことさ。ま、「暗黒時代」の話はあとでゆっくりしよう。まずはインタビューだ。

小野(2010): 面倒くせー。じゃあ、今は何の仕事をやってんのよ?

小野(2016): NASAジェット推進研究所(JPL)で技術者をやっているよ。覚えているだろう、7歳の頃にボイジャーの海王星フライバイのニュースを見て衝撃を受けて以来、憧れていた場所だよ。今はMars 2020という次世代火星ローバーのプロジェクトに入っていて、探査候補地点の解析なんかをやってるよ。それと、火星ローバーの自動運転アルゴリズムの開発をしたり、未来の宇宙探査機の人工知能の研究をしたりしている。毎日朝から晩まで、自分が好きな宇宙のことばかり考えて生きているよ。

もちろん日々の仕事は、プログラムを書いたり、シミュレーションを回したり、地味で地道な作業が多いさ。でもいつか自分のやった仕事が実を結んで、火星から大発見をもたらすことに貢献する日のことを思うと心が踊る。

宇宙に限らず、技術者や研究者って、本当にやり甲斐のある仕事だと思うな。未来を現実にする仕事なんだから。イノベーションなんて言葉が流行っているけど、大元はすべて、カリスマ経営者でもエンジェル投資家でも凄腕コンサルタントでもなく、技術者や研究者の頭と手から生まれたものなんだ。

小野(2010): ふーん。まぁいろいろ突っ込みたいけど後にしよう。で、どうやって就職したの?

小野(2016): きっかけはインターンだったね。アメリカのインターンは2、3ヶ月の期間があって、給料も月に3千ドル(33万円)とか出る。プロジェクトの実働戦力として扱われるんだ。MITの博士課程が終わる頃、幸運にもインターンの機会をもらえたんで、9週間死ぬほど頑張って結果を出して、認められたんだ。

小野(2010): 今の待遇はどうなのよ?

小野(2016): 単刀直入に聞くなぁ…。年俸制で、だいたい年13万ドルだから、1500万円弱かな?アメリカは税金が高いし、家賃も子供の教育費も日本より桁違いに高いから、日本での年収1500万円と比べると、全然リッチな感じはないけどね…

小野(2010): それってアメリカの技術者にとっては普通の待遇なの?

小野(2016): アメリカのトップ大学の博士卒だと、技術職の初任給は少なくとも10万ドル(1100万円)くらいはあると思うよ。シリコンバレーだと20万ドルもらう人も珍しくないんじゃないかな。とにかく、アメリカでは技術者にもコンサルや金融と張り合うくらいの給料が出る。そうじゃなきゃ、良い人材が流れちゃうからね。

小野(2010): 博士号を持っていると待遇が上がるんだね。日本ではむしろ、博士卒は専門性が高すぎて育成しづらい、なんて言われるよね。

小野(2016): アメリカの企業は自前で新卒を育成しないからね。即戦力採用なんだ。JPLも研修は1日だけで、2日目からプロジェクトに投入されたよ。だから、博士卒は既に知識やスキルがある分、評価されるんだよ。

小野(2010): だから採用面接での評価ポイントも、大学での授業や研究が主なんだね。

小野(2016): そう。逆にサークルのキャプテンをやっても何も評価されない。だからこそアメリカの学生は大学の授業や研究を必死に頑張る、という面はあるよね。それによって大学教育の効果も高まるから人材が育つ。良い循環が回っていると思うよ。

 

 「人気企業ランキング」に潜むダークサイド

小野(2010): 早く「暗黒時代」の話をしようぜ。何のために俺を呼び出したんだよ。

小野(2016): まあ急ぐな。その前に、俺が22歳でMITに留学した時のことを思い出そう。もちろん宇宙への夢が渡米の第一の理由だった。だけどそれだけじゃなかっただろう。

小野(2010): ああ…日本で型にはまった就活をするのが嫌だったな。だってさ、金髪にしたり、奇抜な服装をして「自分らしさ」をアピールしていた友達がさ、揃いも揃って型にはめられて、黒髪に黒いスーツを着てんだぜ。そうやって頑張っている友達のことを悪く言うつもりはないよ。でも自分もそうやって社会に埋没していくのは嫌だ、って本能的に思った。

小野(2016): そうだよな。俺は純粋に、この一度きりの人生を最高に面白い人生にしたかった。日本の就職活動というシステムの枠の中では 、「いかに生きるか」という自由記述式の問いが、「どの会社を選ぶか」という記号選択式の問いに置き換えられてしまっている。もちろん、選択肢の中にベストな答えがあればそれでいいさ。でも無いならば、枠からはみ出すしかない。俺の夢はエントリーシートの四角い欄に収まらないほどにでっかいんだ、なんて、生意気なことを考えていたよな。

小野(2010): まあでも現実にはさ、みんなが留学や起業できるわけじゃないし、生きていくための金も必要だし、ある会社のリストから選ぶのは仕方ないんじゃないの?

小野(2016): たとえそうだとしてもだよ。どうして日本の就活生って、あんなにランキングを気にするんだろう?たとえば「人気企業ランキング」とかって、あれ何の意味があるんだ?どうして自分が行きたい会社を選ぶときに、他人が行きたい会社を参考にするんだろう?オリコン1位でも自分の趣味に合わない音楽なんて聴きたくないだろ。ましてや自分の人生だぜ。どこが人気あるとか、どこが安定だとか、どこがブラックだとかホワイトだとか、どこが合コンで人気だとか、そんなことより前に、「なにが自分の人生をかけた夢なのか」が、まずあるべき問いだよね。

小野(2010): でもさ、夢なんて、誰もが持っているもんじゃないぜ。持っていない人の方が多いんじゃないの?

小野(2016): たぶん夢がないという人は、その人に見えている範囲の世界に夢が見当たらないだけだと思うんだ。だって世界はこんなに広いんだぜ。ならば自分の世界を拡げればいいんだ。

俺の目から見れば、世界は本当に面白いことで溢れているよ。いつも俺は若い人に、「本を読め、旅をしろ」と言っている。世界を拡げるためだ。大学の授業だって探せば面白いのはたくさんある。新しい人に出会ったり、新しい知識を得たり、新しい場所を歩いたりして、自分の世界を外へ外へと拡げ続ければ、絶対にいつかは夢や目標や志が見つかるものだと思うよ。

でも世界を拡げるには努力がいる。大学の最初の3年を何も考えずにボーっと遊んで過ごして、いざ就活になったら、あわてて頭をひねってエントリーシートに書き込む「夢」をでっちあげるんじゃだめだ。努力して探し続けなきゃいけない。たくさん本を読んで、たくさん旅をするんだ。

小野(2010): でも、俺は逆に、旅をしたせいで夢を見失ったじゃないか…

小野(2016): そうだな。じゃあ、いよいよその話をしようか。

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ハロウィーンの日にマスクをかぶってJPLに出勤し、プレゼンをする小野氏。
就活で悩んだ、僕の暗黒時代

小野(2010): 2009年にアフリカを旅したときの衝撃は、まさか忘れていないよな。ガンビアで出会ったフルーツ売りの少年。ブルキナファソから戦乱を逃れてきた。学校に行けないから、フルーツを売りながら学校から本を借りてきて独学していた。宇宙の話をしたら、目を輝かせて聞いていた。

小野(2016): カシム君のことは今でも心に焼き付いているよ。その後、家に招待してくれた。荒れた空き地にコンクリート・ブロックを積んだだけの家だった。室内はアフリカの夜よりも暗かった。懐中電灯が灯りの代わりだった。貧しいはずなのに、こんな日本からきた金持ちを精一杯もてなしてくれた。あの少年、自分の誕生日を知らなかったよな…

小野(2010): まだは続けているのかい?

小野(2016): ああ。3年前には念願のインドに行ったよ。バラナシにもいった。『深い河』を読んで以来、ずっと行きたかった場所だ。

小野(2010): そういう貧しい国を旅するたびに、俺は無力感に襲われるんだ。何兆円もの金を宇宙飛行士が宇宙ステーションからニッコリ笑って手を振るために使ってさ、何千億円を40億年前の火星に海が存在した証拠をつかむために使ってさ、メキシコのメリダの教会の前で、骨と皮だけの腕を伸ばしてたった1ペソのコインをせがむ物乞いの姿を見たときに、一体俺は何をやっているんだ、って思ったんだよ。

小野(2016): そうだな。それは全うな感覚だと思う。

小野(2010):宇宙は俺の子供の頃の夢だったけど、それは子供の夢で終わらせるべきなんだ。大人は現実を見なくてはいけないんだ。

小野(2016): しかし、そうやって宇宙に愛想を尽かした君が今、どうして金融やらコンサルやらIT企業やらに就職活動をしているんだい?

小野(2010): それは…そうだな、MIT時代に出会った、そんな会社から来た日本人留学生たちのことを覚えているだろう?

小野(2016): もちろん。彼らの何人かは、今まで会った中で最も頭がキレる人で、その上に酒を飲めば楽しかったし、大志も持っていた。なんとなく彼ら、彼女らに憧れたんだよな。

小野(2010): うん。それに、このままチマチマと研究をやるよりも、そういう業界で得たビジネススキルやリーダーシップを活かして将来事業でも起こした方が、大きなことができるだろう。

小野(2016): おいおい、まるで就活生みたいな口の利き方をするな。

小野(2010): …だって就活生だもん。面接対策も必要さ。

小野(2016): でも、あまりうまくいってないんだろう?

小野(2010): 声がかかったとこもあるさ…でも、まあ、そうだな…

小野(2016): どうしてだと思う?

小野(2010): いや、どうしてって、そりゃあ競争が激しい業界だし…

小野(2016): はっきり言おう。君が本当に好きなことじゃないからじゃないか?夢中になれることじゃないからじゃないか?たとえば、君はあるコンサル会社の面接を受けたとき、「売れないタオルを売る方法を考えろ」という問題を出されたね。

小野(2010): ああ…まあ、無難に答えはしたけど…

小野(2016): そのとき、君はどう感じた?

小野(2010): どうって…タオルに一生を捧げている今治のおじさんとかもいるわけだし、これも重要な問題だな、と…

小野(2016): 今治のおじさんじゃない。君がどう感じたかを聞いているんだ。

小野(2010): 正直言うと…つまらないと感じてしまった…

小野(2016): そうだよな。そして君は自分がどんな人間か知っているだろう。子供の時から、大好きなプラレールとかレゴとかには時間を忘れて没頭していた。でも興味のないことをさせられると、すぐに寝た。

小野(2010): ははは、今でもそうだよ。話がつまらないと、一対一で喋ってても寝ちゃうし。

小野(2016): そしてすぐに顔に出る!つい口にも出してしまう!プロピッカーに選んでもらってお世話になったNewsPicksさんの記事でも、つまらないものには堂々とつまらないと書いてしまう(笑)

小野(2010): 俺は33歳になっても変わらないんだなあ(苦笑)

小野(2016): つまりそういうことなんだよ。俺は不器用な人間なんだ。好きなことに没頭すれば人の100倍の力を出せる。でも興味のないことには人の100分の1の力も出せない。自動車だったら、西に走っても東に走っても同じスピードを出せるさ。でも俺は、同じ微分方程式を解くのでも、それが火星ローバーの経路設計のためか、金融のデリバティブの値段を計算するためかで、やる気もパフォーマンスも雲泥の差がつく。君は…つまり俺は、好きだと心から思えないことをやっても、何にもならない人間なんだよ。

小野(2010): そうは言っても…さっきも言っただろう、世界が貧困や気候変動などの問題を抱える中で、宇宙に大枚をはたく大義がどこにあるんだ。

小野(2016): きっとそれは、全ての人が納得する答えは存在しない問題だと思う。俺なりの答えは出した。長くなるので、今ここで語りはしない。以前に記事にしたので、興味があったらあとで読んでくれ。

でもね、本当に大事なのはそこじゃないよ。今の俺は、たとえ世界中の人に批判されたって宇宙をやる。子供の頃からの夢を貫く。だって俺の人生じゃないか。一度きりの、ほんの短い人生じゃないか。とことん自分の好きなことをやり尽くして死んでやろうと、今は思っているよ。

小野(2010): でも、それは無責任なんじゃないか?

小野(2016): そうかもね。でもね、若者ってときどき、自分が世界のすべてを背負って立たなくてはいけないように考えることがある。男は誰しも一度は英雄に憧れるものだ。社会に対する責任感は素晴らしいよ。でもね、君には背負いきれないことだって、たくさんあるんだよ。君に非は全くない。ただ、世界が君にくらべて大きすぎるだけさ。もし君に果たすべき責任というものがあるならば、それは君が背負えるものを背負って、一歩でも二歩でも前に進むことなんじゃないかな。小さな人間の短い一生で、それだけできれば、大したものさ。

小野(2010): それでも…まだ納得できないな…

小野(2016): 大丈夫。ほら、君は来月、スペースシャトルの打ち上げをフロリダに見に行くだろ。山崎直子さんが乗るやつだ。

小野(2010): うん。

小野(2016): それを見たら、全てが腑に落ちる。

小野(2010): 何が起こるの?

小野(2016): それは著書に書いたりはしたけど…でも、今君にそれを言葉で説明するものではない。心で感じるものだ。人生という旅路では、魂を揺さぶられる経験に、必ず何度か出会うものだ。君にそれがもうすぐ訪れる。そういう経験を大事にすること。そしてその時のために、心の感受性をキンキンに研ぎ澄ませておくことだ。

小野(2010): …

小野(2016): さあ、そろそろお別れしようか。

小野(2010): ああ、なんだか最後は話が哲学めいたけど…ありがとうな。未来の俺がこんなに生き生きとしているのを見て、なんだか安心したよ。

小野(2016): あ、それともう一つ…君は今、寂しいだろ。

小野(2010): 余計なお世話だ。

小野(2016): 心配するな。君はもうすぐ、運命の人と出会う。

小野(2010): え!?

小野(2016): しかも、実は君がもう知っている人だ。

小野(2010): それって…

小野(2016): さあ、ちょっと喋りすぎた。さようなら、迷いの中の俺よ。自分の心に素直に生きれば何も心配はない。じきに、その迷いが無駄ではなかったと気付くから…。

Follow your heart!

あれからもう6年か、と思います。あの魂を揺さぶられる経験をしたあと、僕は夢を取り戻し、夢中で駆け抜けました。あっという間の6年だった。全てが順調ではありませんでした。JPLから一度、落とされもしました。でもなんとか這いつくばって、いまの自分があります。

ふと、未来の自分からインタビューの呼び出しがかからないかな、なんて思います。5年後、10年後の自分はどうなっているのだろう。未来は本当に分かりません。きっとうまくいっているさ、と楽観的にも思う一方、不安もたくさんあります。その点では就活生のみなさんと大差ないのかもしれません。

そんな時、本当に大事なのは、自分の心の底から聞こえる声に、素直に耳を澄ますことだと思います。もしあなたが将来に迷っていたら、その答えは、就活情報サイトでも、人気企業ランキングでも、カリスマ経営者や内定王や僕の言葉でもなく、あなた自身の心の中に必ずあると、僕は思います。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校でもマスク姿でプレゼンした小野氏。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校でもマスク姿でプレゼンした小野氏。

 

 

 

 

 

 

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