著書『宇宙を目指して海を渡る』発売のお知らせ

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僕の著書『宇宙を目指して海を渡る』が明日(4/25)に発売になります!紙版早ければ今日の夕方から都心の大型書店に並び始め、徐々に地方や小店舗に伝播していくそうな。電子版も同時に出ます。

以下、序章の一部を抜粋することで、紹介文に代えさせていただきます。


僕にとって、生きることとは宇宙を目指すことだ。この人生において宇宙開発の歴史に残る大きな仕事をしたい。だから僕は海を渡った。

夢を目指して頑張った、と言えば聞こえが良かろう。だが実際は、夢に取り憑かれていた、と言う方が正しいと思う。それは恋だった。病と呼んでもいい。夢は顔こそ美しいけれども本性は苛烈だ。井の中の蛙がMITで生き残り卒業するまでには大変な苦労を要した。その間に目標を見失い悩んだ時期もあった。現在勤めているNASAジェット推進研究所(JPL)からも一度は落とされた。それでも夢は僕に取り憑いて離れなかった。だから必死に頑張った。道中では多くの人に助けられ、多くの幸運に恵まれた。そしてどうにかここまで辿りついた。

「グローバル人材」がどうのこうのと最近の世の中はやかましい。正直、僕にとってはどうでもいいことだ。もちろん、MITで博士号を取ったことやJPLで宇宙開発をしていることは僕の誇りであり、卑下するつもりはない。だが、僕は「グローバル人材」などという安っぽいラベルが欲しかったから海を渡ったのではない。自分の夢を叶えるためのベストな道だと思ったからそうしたまでだ。東大とハーバードのどちらが偉いなどという議論に何の意味もない。日本で働くかアメリカで働くかということは、東京で働くか大阪で働くかということと本質的には何の差もない。ただ一つ僕にとって重要なのは、自分がこの人生で何を成したいかを知っていて、それに向かって日々頑張り続けていることだ。空の向こうに目指す星が明々と輝いていることだ。

自ずと、本書の多くのページは、僕のMITでの経験談や、アメリカの大学の仕組みの説明などに費やされることになるだろう。(中略)だが、誤解を招かぬようまず断っておきたい。本書の目的は、アメリカのあれやこれやを日本と比較してどちらが優れているなどと議論することではない。猫も杓子も海外に行くべきだと言いたいのでもない。ましてや昨今の「グローバル人材」ブームに加担したいわけでも、また逆に「人材流出」の危機感を煽りたいわけでもない。そんなことを論じるほど僕は偉くないし、そもそもそのような議論に興味がない。日本で成すべき志があるならば胸を張って日本で頑張ればいいし、夢を叶えるための最適な場所が海外にあるならば迷わずこの島国を出て行けばいい。ただそれだけだ。若者たちが安易な流行に踊らされず、一度きりの人生を最も充実させる道を選択するための判断材料にしてほしい。それだけが本書の目的だ。

(中略)

JPLは子供の頃からの憧れの場所だった。三十年かけてやっと、その入り口の扉をこじ開けた。

そんな三十年分の身の上話が、本書を構成する縦糸である。宇宙を目指して海を渡る物語だ。(中略)そして横糸となるのが、MITやJPLでの経験を通して得た知見や哲学である。この縦糸と横糸を織り上げて一枚の布にするために、本書は少々変わった構成を採用する。即ち、プロローグ以下の十六の章のうち、奇数章に縦糸を成す個人的ストーリーを、偶数章に横糸を成す一般化された知見や哲学を配する構成である。それぞれの偶数章は隣接する奇数章からの帰納である。もちろん、順番に通して読んでいただくことを意図して執筆しているが、純粋な物語として読まれたい方は奇数章のみを、純粋な実用書として読まれたい方は偶数章のみを読んでいただいても構わない。
この物語は「半生記」などというほど大仰なものではない。僕はまだ、歴史に名を残すような大きな仕事など何もしていない。たった六、七年の海外経験で偉ぶるつもりなど全くない。

だが、人類にとっては目に見えないほどに小さな一歩でも、ひとりの人間にとってはとてつもなく大きな一歩というものがある。僕にとってはMITへの留学やJPLへの転職がそれだった。おそらく殆どの人にとって、人生とはそういう一歩一歩の積み重ねだろうと思う。ならば、僕の足跡を、それが風化する前にありのままに書いて伝えることによって、これから一歩を踏み出そうとする多くの人たちに少しばかりの貢献が出来るかもしれない。そう思って、この物語を始めることにする。

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