はやぶさ帰還/Falcon 9ロケット打ち上げ成功

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宇宙開発にとって嬉しいニュースが二つ続いた。小惑星探査機「はやぶさ」が地球へ帰還する軌道へ乗ったこと、そして民間で開発された大型ロケットFalcon 9の初打ち上げの成功だ。

無人の宇宙開発の意義は、おおよそ二つしかない。科学的知識の探求と、社会インフラの構築である。はやぶさの成功は前者に、Falcon 9の成功は後者に、大きく貢献する。

はやぶさ帰還/「ナンバーワン」であることの意義

はやぶさ」は世界で初めて、小惑星の土のサンプルを地球へ持ち帰る試みである。今までに人類が土のサンプルを持ち帰ることに成功した天体は、月以外にはない。太陽の周りを回る惑星からのサンプルリターンは世界初である。もし、6月13日に地球に帰還するはやぶさのカプセルの中に小惑星「イトカワ」の土がほんのひとかけらでも入っていれば、それは宇宙開発の歴史に名を残す快挙となるだろう。


(Image courtesy of JAXA)

事業仕分けで「2位ではだめなのですか」ととぼけた発言した議員がいたり、「ナンバーワンよりオンリーワン」などという歌が流行ったりしたことは記憶に新しいが、宇宙における科学探査においては(そして他のいかなる科学の分野においても)、「ナンバーワン」でなくては、全く意味が無い。

「ナンバーワン」には二種類ある。世界で初めて何かを成功させること。そして、世界で最良の結果を得ること。とりわけ宇宙開発においては、「世界初」であることが重要だ。世界初の人工衛星スプートニク。世界で初めて宇宙を飛んだガガーリン。世界で初めて月を歩いたアームストロング。それらの名は世界に知れ、歴史に記憶される。しかし、世界で二番目の人工衛星、世界で二番目の宇宙飛行士、世界で二番目に月を歩いた人間の名を覚えている人は、どれだけいるだろうか。

「はやぶさ」は既に世界で非常に高い評価を得ている。それは一重に、その試みが世界初であるからだ。

しかるに、「はやぶさ」の価値を、日本の宇宙政策を練る人たちが正しく理解しているとは言い難い。JAXAの宇宙科学研究所が申請した後継機「はやぶさ2」の予算がなかなか通らず、計画の実現が危ぶまれているのだ。その間、日本から「世界一」を奪還すべく、アメリカは小惑星からのサンプルリターン計画「OSIRIS」を進めている。せっかく日本が打ち立てた小惑星探査における主導権を、みすみすアメリカに譲ることになるかもしれない。もちろん「世界初」の功績は歴史から消えないが、「世界最良」の結果はすぐに更新されうる。しかも「はやぶさ」は小惑星への着陸時にトラブルがあったため、13日に帰還するはやぶさのカプセルに土のサンプルがちゃんと入っていない可能性がある。その場合、「世界初」すらも、アメリカのOSIRISに奪われてしまうのだ。「はやぶさ2」に予算を付けなかった日本の宇宙開発の先見の明の無さには、落胆するのみである。

では、代わりに日本が進めようとしていた宇宙プロジェクトは何か。例えば、「月に二足歩行ロボットを歩かせる」などという、オモチャのような計画だ。日本ではアニメの影響で二足歩行ロボットマニアが多いこともありウケは良いかもしれないが、海外から見れば、失笑を禁じえない、馬鹿げた話である。そもそも、月はすでに、40年も前に人間が歩いているのだ。今更、二足歩行ロボットがその上を歩いたところで、「世界初」でも、「世界最良」でもない。つまり、全く何の意味も無い。ただし、もしその成功が(たとえ世界から失笑されても)日本国民の自信となるならば、いくぶんか価値はあるかもしれないが。

さすがにこの計画が馬鹿げていることに気づいたのか、この五月に公表された宇宙開発戦略本部の「月探査に関する懇談会」のレポートでは、二足歩行ロボットの計画は消え、無人探査機による月面基地に置き換わっていた。しかし、それでもまだ「世界初」や「世界最良」となる目標があるとは言い難い。無人探査機による月面走行や月からのサンプルリターンは、1970年代にソ連が既に達成しているからだ。もしこのまま「世界初」か「世界最良」となる目的を見つけられなければ、税金を使ってこの計画を進める価値はない。例えば、月に存在する資源の開発を目的とするならば、価値があるかもしれない。その場合は、「科学探査」というよりも「社会インフラ」としての性質が強くなるため、費用対効果や、月に存在する資源の利用可能性についての議論が必要である。

日本の宇宙における科学探査は、「はやぶさ」を先例として、野心的に「世界初」か「世界最良」を狙っていくべきである。

一週間後、はやぶさのカプセルが無事にオーストラリアに着陸し、そしてその中に小惑星の土がしっかりと入っていることを、願って止まない。

Falcon 9ロケット打ち上げ成功/民間宇宙開発によるコストダウン

長らく、宇宙開発はNASAやJAXAのような国営機関でなくてはできないという迷信があった。その迷信を完全に消し去ったのが、今回のFalcon 9ロケットの打ち上げ成功だ。

Falcon 9は、完全に民間によって開発された、日本のH-IIAロケットとほぼ同じ性能(低軌道へ10ドンのペイロード)を持つ、大型ロケットである。このロケットの単価はおおよそ45億円。約85億円するH-IIAとくらべると、約半分のコストである。

Falcon 9ロケットを打ち上げたSpace X社は、創業から8年のベンチャー企業である。なぜそんな小さな会社が、H-IIAの半分のコストで、同等の性能のロケットを開発できたのか。

先の事業仕分けで、1枚50円で裁判所向けにコピーサービスをしていた事業が批判された。彼らの言い分はたしか「裁判記録には品質の高いコピーが必要で、そのためには手間のかかる手作業が必要になる」、そんなものだったと思う。それは確かに、正直な言い分であろう。しかし、それでも「一枚50円」という常識外れのコストがかかる理由は結局、国相手の商売なので、「たとえ高くても買ってもらえる」からだ。競争に負けて淘汰されるリスクが無いので、自然とコストダウンをする努力がおなざりになってしまうからだ。

全く同じ構造が、ロケットにもある。どんなにH-IIAロケットが高くても、信頼性が低くても、必ず年間数本は日本国に買ってもらえる。もちろん、JAXAや三菱重工のエンジニア達はコストダウンや信頼性向上のために大きな努力をしただろう。しかしそれでも、「買ってもらえなければH-IIAが淘汰される」という危機感が無くては、無意識のうちにコストダウンの努力が甘くなるかもしれない。

同じことは他の国が運用するロケットにも言える。世界中の国が皆、国営事業でロケットを打ち上げているから、コストダウンの圧力もなければ、淘汰も起きない。

一方、Falcon 9のような民間のロケットは、競争に勝ち残らなければ会社が潰れる。だからエンジニアはコストダウンと品質維持に心血を注ぐだろう。そのような競争が世界中で起きれば、宇宙開発の未来は明るい。

そして、打ち上げコストが下がれば、通信、放送、GPS、気象観測、温暖化観測などの「社会インフラとしての宇宙開発」のコストも下がり、利用は拡大する。宇宙がより、地球上の人類の役に立つようになるのだ。

また、オバマ政権が月や火星に人類を送り込む「コンステレーション計画」を中止したのは、技術的理由ではなく、財政的な理由だ。コストがかかりすぎるからだ。Falcon 9が起爆剤となり、宇宙への打ち上げコストが下がれば、火星がぐんと近くなる。

ただし、Falcon 9ロケットは、まだたった一回の打ち上げを成功させたのみである。信頼性を実証するには、少なくとも連続十回の打ち上げ成功が必要だろう。Falcon 9が本当に試されるのは、これからである。

余談 – オーストラリアのUFOの正体は本当にFalcon 9か!?

オーストラリア東部でUFOが目撃されたというニュースがあった。目撃証言によると”It had a distinct bright centre, much like a bright star, indicating an object shedding light trails, spiraling and fattening out from it” (それは明るい星のように明瞭に輝く中心を持ち、渦を巻いて拡がる光の尾がそこから流れ出しているようだった)そうだ。Youtubeにビデオがあった。

これに対しシドニー天文台の天文学者が、UFOの正体はちょうど同時刻にオーストラリア上空を通過したFalcon 9ロケットだろうと言ったそうだ。

しかし、この天文学者の説明はあまりしっくりこないように思える。

オーストラリアはロケットが打ち上げられたアメリカから見て地球の反対側にあり、ロケットがここまで到達するのに約45分かかる。ロケットのエンジンは打ち上げ後8分半で燃焼を終えるので、オーストラリア上空を通過したときには、既にエンジンの火は消えていたはずである。エンジンが止まっていれば、目撃証言にあるような、尾を引く明るい光が見えるとは考えづらい。

あるいは、第二段ロケットを再点火する実験が行われたそうなので、それを見たのかもしれない。もしそうならば、あんなに派手に渦を描いていたということは、再点火後のロケットの姿勢制御がうまくいっていなかったということになろう。しかし今のところ、そのような報道は聞かない。

「UFO」が観測されたのは夜明け前だったそうなので、もしかしたら、使用後の第二段ロケットから流れ出した使い残しの燃料が太陽に照らされて明るく輝いていたのかもしれない。これが一番もっともらしい説明だろうか。ロケットが飛行していたのは上空約250km。その場合、どの程度の大きさ、明るさに見えるのだろうか。これはちょっと僕は見当をつけることができない。

いずれにせよ、僕は残念ながら、安っぽいオカルト番組に登場するUFOや宇宙人にギャーギャーと騒ぐ性質ではない。しかし一方で、そうしたものを片っ端から頭ごなしに否定するような、面白みの無い人間でもありたくはない。

ときどき発作のように湧き起こるUFO目撃のニュースを笑い飛ばしながらも、「もしかして既に宇宙人が地球に来ているのかもな」、そんな空想を半ば冗談で楽しむのも、一興かと思う。

3 thoughts on “はやぶさ帰還/Falcon 9ロケット打ち上げ成功

  1. 「はやぶさ?2」がなかなか打ち上がらないのは何故だろう?と僕も良く疑問に思います。タッチダウンを試みた2005年の熱狂は記憶に新しいけど、流石に5年あったら同等機なら開発完了しててもいい頃なのに。予算が付くまでのプロセスの方が開発期間よりも長いという状況には苦笑いですよ。でも、宇宙関係の全体予算が小さくてそれを色々な研究テーマで奪いあっているから後発提案は後回しになるのは分からなくも無い(明らかに価値のないミッションを削るのは賛成)。でも安くできるかというと、宇宙開発の公共事業的な側面(雇用の確保とか)がやっぱり問題になる。シャトルの固体モータ作ってるATKが大規模な解雇をしたとかニュースで見ると、確かにそうなるよなぁと思ってしまう。結局泥沼。。僕としては民需でやっていける新しいプレイヤーが宇宙を盛り上げてくれることに期待しているよ。

  2. 宇宙も国営事業であるゆえ、既得権益に縛られてしまうよね。コンステレーション計画でシャトルのコンポーネントを再利用しようとしたのは、「開発期間を短くするため」などといっていたけど、本音は雇用を守るためです。さもなければ、たとえばATKのあるユタ州の議員がああだこうだ言うから。だから、オバマの新宇宙政策は、そのような既得権益を無視したプランであったという点においても、画期的だったわけだ。でも、いまだ議会を通らないのは、やはり新宇宙政策によって不利益を被る地域の議員が反対しているからではないかな。

    そんなわけで、俺らの世代が、がんばるしかない!

  3. 既得権益って過去からの負債みたいなもんだから、結局現状を圧迫してジリ貧になっていく。やっぱり血液の入れ替えが必要だと思うんですね。

    ぜひ僕らの世代でがんばりましょう!

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