祭り – Las Parrandas de Remedios, Cuba

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メキシコのユカタン半島を横断した後にキューバへ飛び、クリスマスはレメディオス(Remedios)という町で過ごした。この人口5万人の小さく静かな町が、毎年12月24日の晩は、キューバで一番賑やかな祭りの舞台になるのだ。

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祭りの名はLas Parrandasと言い、直訳すれば「ザ・どんちゃん騒ぎ」。クリスマス・イブであるにも関わらず、キリスト様マリア様サンタクロースなんて一切関係なしに、町内総出の乱痴気騒ぎを繰り広げる。飲む、歌う、踊る、ありとあらゆる手段を尽くして騒ぎまくるのがこの祭りの趣旨だが、何と言っても圧巻なのが花火合戦だ。町の人たちが「雄鶏チーム(gallo; 正式名称はSan Salvador)」と「雌鶏チーム(gallina; 正式名称はEl Carmen) 」に分かれ、ぎゅうぎゅうに混み合う狭い広場の中から何万発もの花火を打ち合い、その派手さ、激しさを競うのだ。安全など二の次、人ごみに花火が飛び込んで破裂することも度々、鼓膜を突き破る爆音、雨のように降る灰と火の粉、広場にもうもうと立ち込める煙、さながら戦場のよう。そして翌朝にラジオで勝敗が発表され、勝ったチームは町をパレードする。

しかし、形式上は雄鶏チームと雌鳥チームの競争ではあるが、敵対的な雰囲気は一切なかった。むしろ、熱気立ち込める広場に溢れていたのは、交わる男女がお互いを激しく攻めることによってお互いの興奮をエスカレートさせ、しまいに高温で融けてひと塊になってしまったような、そんな官能的な一体感だった。

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僕がRemediosの町に着いたのは、祭りの二日前の夕方だった。早速広場に行くと、既に準備は始まっていた。雄鶏チーム、雌鶏チームそれぞれが、広場の両側に、クレーンを使い、高さ10メートルはある巨大な山車を組み上げていた。子供のための移動遊園地もやってきた。普段は静かな田舎町が、日常という服を脱ぎ捨ててゆく。

祭り前日の朝六時、突然鳴り響いてきた爆音に僕は叩き起こされた。広場に行ってみれば、早くも人々が大勢集まり、花火を打ち、太鼓を叩き、トランペットを鳴らして騒いでいた。祭りの前戯が始まったのだ。

夕方にはロックバンドの演奏が始まり、人々はビールやラム酒の瓶を片手に、歌い、踊り、飛び跳ねる。僕がそれを遠巻きに見物していると、突然見知らぬおばちゃん二人に両脇を抱えられ、無理矢理踊りの輪の中に投げ込まれた。本番を明日に控え、徐々に人々の興奮は高まってゆく。徐々に肌が熱くなってゆく。

人間も温度が上がれば化学反応が起きやすくなる。だから祭りは格好の出会いの場だ。祭りの当日、女の子たちはセクシーな服で着飾って広場に集まり、男の目にアピールする。そして相手を見つければ、大音量で流れる音楽にあわせて、腰と腰をぴったりと付けて踊る。

祭りの夕、空が暗くなるにつれて、広場の人はどんどん増えていった。山車の電飾に明かりが灯され、各チームの旗が振られる。本番の開始を待ちきれない人たちが、既にあちこちで花火を打ち始める。トランペットが音を鳴らせば、周りの人たちは手を叩き、奇声を発し、肩を組んで腰を振る。誰も高まる一方の興奮を抑えられないし、抑えようともしない。温度は臨界に達した。もう、我慢できない。

夜10時、増水した川が堤防を突き破るように、本番が始まった。先に攻めるのは雌鳥チームだ。直径15cm、高さ60cmほどの大きな花火の発射筒をずらりと並べ、男達が松明で次々と点火する。間近で発射筒が炎を吹く瞬間、周囲に立ち込める煙は真っ赤に染まり、熱が顔を焼き、爆音が腹を殴る。

対する雄鶏チームは量で勝負する。約500本のロケット花火を吊るしたラックを20脚ほど一列に並べ、一斉に点火するのだ。計1万本のロケット花火は、甲高い音を立てながら、各々がランダムな軌道を描いて飛んでゆく。大部分は空へ向かって飛ぶが、一部は建物の壁に当たって破裂し、一部は見物客に向かって真っ直ぐに飛んでくる。

この雄鶏と雌鳥の激しい攻め合いが5時間にもわたって、かわるがわる何度も繰り返される。がぶがぶ飲んだラム酒の酔いが回り、危険の感覚を麻痺させる。興奮が高まるにつれ、熱も爆音も火傷の痛みも全てが快感に思えてくる。そうして祭りはエスカレートし、雄鶏と雌鳥はさらなる刺激を、興奮を、エクスタシーを、お互いに求め合う。

しかし午前3時頃、祭りの雰囲気は突如一変した。花火が止み、音楽は優美な曲調に変わる。そして色とりどりの電飾で華やかに輝く両チームの山車が、壮麗な衣装を着た男女を載せ、ゆっくりと広場の中を進んでゆく。花火の打ち合いを五時間も続けたあとのこの変化に、ちょうど体位を変えた時のように、新鮮な空気が広場に流れ込み、祭りは再び活気付く。

そして午前5時、祭りは最後の局面に入った。酔いと興奮と疲労で頭がもうろうとする中、両チームとも残っているありったけの花火を打ち尽くす。声は枯れ、肌は汗と灰にまみれる。やがて絶頂に達した興奮のうちに夜が白みだした。そして最後の花火が爆発するように、太陽が昇り、空は真っ白の光で溢れかえった。

祭りは、果てた。

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