秋は寂しさ

Posted on Posted in 日々徒然

夏の終わり、秋の始まりは、三暖四寒を繰り返して寒くなってゆくのだけれども、その中でふと、「もう後戻りしないだろうな」と確信するような寒さの日がある。そんな日が先週にあった。雨が三日も降り続き、久しぶりに晴れた朝、目を覚ましてベッドから下りると、窓を通り抜けて部屋に入り込んだ冷気に身震いがした。一枚余分に着重ねて玄関を出ると、寒さに体が締め付けられる感じがした。

そうして、ボストンに来て四度目の秋が来た。留学四年目の始まりでもある。どうして欧米の人は、こんな寂しい季節を一年の始まりに選んだのだろうと思う。赤や黄に染まる景色に終わりの予感を見出し寂しさに浸るのは、日本人独特の感覚なのだろうか。

2008/10/6, Vassar St, Cambridge, MA

毎週飽きもせずぐだぐだと溜まっては飲む日本人の仲間たちがいて、自虐的に”KBSM” (Kawari-Baeno Shinai Mentsu, 変わり映えのしないメンツ)などと自称しているのだが、そのKBSMの友人の一人が、もうすぐ卒業して日本に帰ってしまう。彼は三年前に一緒にボストンに来た同期だから、寂しさはなおさらだ。明後日の晩は彼の卒業をビールかけで祝う予定だ。その夜くらいはこの冷え込みが和らいでくれないものか。

一方の僕は26歳になった。誕生日の晩は友達が僕の新居に集まってパーティーを開いてくれた。ある友人はケーキを焼いてくれ、ある友人はシャンパンを持ってきてくれた。例のもうすぐ帰国するKBSMの友人は、いつも通り酔い潰れて僕のベッドを占領し、結果、僕は誕生日の夜に床で寝る羽目になった。彼がベッドの上に嘔吐しないか気を揉みつつも、こんな仲間に囲まれて誕生日を迎えられることこそが素晴らしい幸せなのだと思った。

僕は寂しがり屋なのか、それとも寂しさが好きなのか、一体どちらなのだろうと思う。もしかしたら二つは同じものではなかろうか。寂しさとはきっと、魚を待つ釣り糸の緩みのようなものだ。その緩みは常に魚を求めつつ、目的を達成した時に緩みは消え失せる。寂しさとは本質的に自己否定の作用なのだ。だから寂しさを愛する人は、必然的に寂しがり屋でなくてはならない。

だから秋は寂しさだ。冬へ向かう作用が秋で、その目的を達成したときに秋が終わるからだ。しかし、ならば冬こそが寂しさだとも言えよう。春を待つ作用が冬で、その目的を達成したときに冬が終わるからだ。ならば春は…。すると結局、生々流転する世界は全てが寂しさか。

だからといって、僕は決して悲観に暮れているわけではない。釣り人が糸を垂らして待つ時間を楽しむように、僕も新しい何かを期待して、この秋の寂しさを楽しんでいるのだ。

しかしボストンの街は、ゆっくりと秋の寂しさに浸らせてはくれない。長い冬がもうすぐ始まる。

[追記] 忙しさにかまけて小説書きがすっかりご無沙汰なのだが、半年ほど前に書いたものが一本ある。あまり評価が芳しくなくてお蔵入りしたのだが、上の記事でその一部を使ったので、この機会にアップロードすることにした。

もし読んでいただけたならば、意見をいただけると嬉しいです。

9 thoughts on “秋は寂しさ

  1. だめだ・・読もうとしたけど面映くてだめだ。知り合いの書く小説とゆうのは読みづらいもんですね。評価が芳しくないわけじゃなくて、みんなそうゆう反応なんじゃないですか?
    最初に名前が出てきちゃうともういけない。顔が浮かんでくるから。あれ外したほうが知り合いには読みやすいんじゃないですか?

  2. くろきさん>確かに、書いた人を知っていると、余計な情報が入っちゃうのかな(笑)だからきっとペンネームを持つ人が多いのでしょう。緒野雅裕は小野雅裕とは別人と思ってみてください。

  3. 昨日はどうもでした。ビールかけならぬソーダかけ、楽しませていただきました。人生で最も美味いコーラが(頭から)飲めました。

    まあまあ、また東京か、ボストンか、ニューヨークあたりで飲もうや。今後もよろしく。

    小説、良いと思うよ!今回は夢オチじゃないのね。

  4. N*N> おーいえいえ、今晩は暴れよう!
    小説読んでくれてありがとう。オチは難しいねー、まずは日々のギャグが滑らないように練習しなくちゃいけないのかな(笑

  5. 小説読んだよ。

    おもしろかった!
    ひとり旅に行きたくなりました。

    今度はケンジ側からみた「私」とか書いて欲しいな。
    某『冷静と情熱のあいだ』みたいだけど。(笑)
    あと、男の人が書く女性の主人公って、クールだよね。

  6. ゆみこ>おーありがとう!たぶん、女の人から、俺に理解が及ばないものを引いていくと、クールなキャラクターになっちゃうのかなあ。

  7. 読んだよ?
    前に見せてもらったときと少し変わってる(?)のかな

    理解できないものと ひろ自身とを合わせたような主人公だね
    小説としては成り立たないのかもしれないけど、つづきが見たい
    面白かったよ

  8. よー>おー、ありがとう!や、たぶん前のバージョンと変わってないよ。多分、俺が書く人間は、みんな俺なんだと思う。

  9. はじめまして。
    最近俳句にはまっている韓国人です。
    もっと良い表現がないかなと、ヤフージャパンで検索して、このページに偶然たどり着きました。
    もう2年前の投稿ではありますが秋がたっぷり伝わっていいですね。

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