さよならだけが人生だ

Posted on Posted in しんみり, 留学

土曜日の朝、MITで一番お世話になった先輩を、空港で見送った。

彼は恐らく、両親以外で僕の今まで人生に最も大きな影響を与えた人だと思う。僕が留学という道を選ぶ直接的なきっかけを与えてくれたのは、間違いなく彼だった。留学への漠然とした憧れだけをぶら下げながら、具体的なアクションを何も起こすことなくモラトリアムを謳歌していた大学三年の夏、日本に帰国中の彼と出会った。彼が語ってくれた留学の話は、まさに目から鱗だった。アメリカの大学院では、国籍に関係なく、学費を免除され生活費まで支給されながら勉強することができることを知り、もはや憧れるだけでアクションを起こさずにいる理由を失った。挑戦すべき目標が定まった。僕の人生が幹から枝分かれした。

MITに来てからも、彼にはお世話になり続けた。授業や研究のアドバイスから確定申告の方法まで、嫌な顔ひとつせずに相談に乗ってくれた。僕が今までMITで生き残ってこれたのも、彼に負うところが大きい。

彼はMITの航空宇宙でPhDを取得し、今週からNASAのJPLで働くそうだ。NASAは9・11以降は外国人を滅多なことでは雇わなくなった。その慣例を破っての就職は、彼の傑出した能力の証左であり、ボストンの日本人コミュニティーの誇りだ。

一昨日の空港には、早朝だというのに12人もの人が見送りに集まった。重量制限ぎりぎりの荷物を抱えて、彼は保安検査のゲートの中へ去って行った。空港からの帰りの車は一人少なくなった。寂しいのはもちろんのこと、いままでみんなが頼ってきた柱が抜けてしまった不安も感じた。

翌日も、別の先輩を空港に見送った。STeLAでお世話になった先輩で、彼のプラグマティックな物の考え方と、勉強熱心で決して知ったかぶりをしない姿勢を非常に尊敬している。彼は半年前にMITを卒業して日本に戻っていたのだが、先週は学会でボストンに来ていたのだ。半年前に空港での見送りをし損ねたので、その仕切りなおしだった。

前日と全く同じ場所で、彼を見送った。恥ずかしがりの彼は、照れくさそうにゲートに入っていった。また一人少なくなった帰りの車の中で、次は誰だろうね、俺はまだまだかな、そんな話をした。

時間は過ぎ、ぽつりぽつりと人が去ってゆき、残った人たちが1マスずつ進んで、できたスペースに新しい人が入ってきて、そうして日常は循環し、時間は過ぎ、もう1マス進むとまた誰かが去っていき、新しい誰かが入ってきて、それは自分が去る時まで続く。

「さよならだけが人生だ。」

だからこそ人生は面白いんだ。

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