アメリカの「性」より始まった考察

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これといってすることがない金曜の夜。作り置きしたカレーを食べながら、テレビのコメディー・チャンネルの映画をぼんやり眺めていたのですが、コマーシャルで「セックスは結婚するまで待とう!」という公共広告が流れていて、びっくりしました。小さな子供が何人も出てきて、結婚までセックスを控えればこの子達の明るい将来が拓けますよ、という内容。間違いなくキリスト教右派が流しているのでしょうが、ここまでするか、というのが所感です。

「アメリカは性に奔放だ」と思われがちかもしれませんが、決してそんなことはありません。平均すれば日本よりもよっぽど厳しいのではないのでしょうか。分散が非常に大きいだけです。つまり、奔放な人たちは本当に奔放だし、厳格な人は本当に厳格です。

(追記:2007/9/24) 現在までにアメリカの16の州で、双方の同意の上での婚前交渉も罪とする法律が成立しているそうです。多くは連邦最高裁によって違憲判決が出ているのですが、モルモン教の本拠地、ユタ州では、未だに婚前交渉が罪になるそうです。(参考ページ)(追記おわり)

数年前、スーパーボールのパフォーマンスで、ジャネット・ジャクソンが「ポロリ」をして大問題になったのを覚えているでしょうか。僕なんかは、お祭りなんだし目の保養になるし、いちいち目くじら立てなくてもいいじゃん、と思うのですが、アメリカの保守的な人たちは、あの手のことを決して許しません。

日本のテレビもここ数年は随分厳しくなりましたが、一昔前は、新春かくし芸大会の裏番組で野球拳をやっていたり、深夜には地上波でもエロ番組を流していたりしましたよね。僕も中学生くらいの頃は、毎週土曜日の深夜、親が寝静まるのを待って静かに寝室を抜け出し、テレビの電源を入れた瞬間に音量を最小、チャンネルを12にセットし、深夜2時に「ギルガメッシュナイト」が始まるを、ドキドキしながら待ったものです。

アメリカの地上波では、どんなに夜遅くでも、あのようなエロ番組が放送されることは決してありません。「ミニスカポリス」程度のお色気番組でもNGです。紅白のDJ OZMAのパフォーマンスも確実にNGでしょうね(笑)そんなものを流せば、キリスト教右派から非難轟々でしょう。ダチョウ倶楽部や江頭2:50がお得意のお下品ネタもNGです。

同性愛に関しても同様です。「アメリカは同性愛に寛容」というイメージが日本ではあるでしょうが、そんなことは決してありません。僕の住むマサチューセッツ州では、3年前に同姓婚が合法化されましたが、それはマサチューセッツがアメリカで最もリベラルな風土を持つからです。中部や南部の保守的な州で同姓婚が合法化されることは決してないでしょう。僕の好きな”RENT“というミュージカルにはゲイやレズのカップルが出てくるのですが、ミュージカル好きのキリスト教徒の友達は、「RENTは好きじゃない」と言っていました。また、別の熱心なキリスト教徒の友達が、日本のコメディーを見たいというので、レーザーレモンHGを見せたところ、ひどく怪訝な顔をして「全く面白くない」と言っていました。ゲイの上にお下品、HGがアメリカのお茶の間にデビューするのは不可能なようです。

アメリカはもともと、ピューリタン(清教徒)などが先駆けて移民して出来た国です。そのせいかどうかは知りませんが、キリスト教右派(福音派など)に属する人が非常に多く、強大な政治的影響力を持っています。現在の不人気な大統領、ジョージ・W・ブッシュもメソジスト教会の信徒で、キリスト教右派は彼の強力な支持母体です。

彼らの保守的な態度は、性に対してだけではありません。科学に対しても同様です。とりわけ、彼らは進化論を目の敵にします。「神がアダムとイブを創った」という聖書の教えと矛盾するからです。

2005年にカンザス州で、学校の理科の時間に、進化論と同様に「インテリジェント・デザイン説(ID説)」も教えなければいけない、という決定がなされました。ID説とは、「生命は『偉大なる知性』によって創造された」と説く、なんともいかがわしい「科学」です。要は、宗教色を薄めて「科学」の隠れ蓑を着せるために、聖書の「神」を「偉大なる知性」に置き換えただけのものです。「偉大なる知性」などという反証可能性のない存在を仮定している時点で科学ではあり得ないのですが、キリスト教右派はこれを「科学」だと主張し、小学生に刷り込もうとするわけです。

余談ですが、このID説を皮肉ったパロディーで、「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教」というのがあります。なかなか面白いので、時間があれば上のリンクを見てみてください。

どうも僕はこの「キリスト教右派」に対して好感を持てません。彼らが保守的な思想を持つこと自体は一向に構わないし、彼ら自信がそれを実践するのも何も問題はありません。しかし、困ったことに、彼らはその強大な政治的発言力を使って、違う考えを持つ人たちにも自分の考えを押し付けようとする傾向があります。イスラム原理主義が武力を使って彼らの考えを他人に押し付けようとするのと、似ていなくもないですよね。

拡散した話をそろそろ収束させなくては。つまり、アメリカという国は、日本で思われているよりもずっと保守的な国です。同時に、人々の価値観のばらつきが非常に大きな国でもあります。出る杭を打たなくては気がすまない日本と違い、平均から外れた考えを持っていても胸を張って生きられる国だ、ということでもあります。一方で、保守 vs リベラルの対立軸が非常にはっきりしていて、進化論、同性愛、妊娠中絶、銃規制、移民問題など、論争は尽きません。それなのに、星条旗の下、国の結束は常に保たれている。多様性と対立を内包した結束。これこそが、アメリカの強さの源なのではないか、とも思います。

参考:「純潔」を訴える団体
True Love Waits
Silver Ring Thing
Free Teens

追記 (6/16): ケイティ・ペリー (Kety Perry)というアメリカの女性歌手が、”I Kissed A Girl”という曲で女の子同士のキスを歌ったところ、「思春期の子供を持つ全米の保護者が猛反発」とのこと。新しい情報をシャットアウトすることで既存の価値を守ろうという姿勢、僕は好きではありません。

参考:全米の保護者を大激怒させた、お騒がせアーティスト

4 thoughts on “アメリカの「性」より始まった考察

  1. 日本は全体的にやや保守ぎみでリベラルである事を許す土壌はないと思う。
    どんなにすすんでいても協調性だとかジェンダーは存続すべきだとか上下関係とかはやんわり守れみたいに儒教的意味合いを持つルールを破ることは許されない。意見交換も反対意見、批判はタブー。否定ととられるし、マナー違反とみなされる。
    けど一方極右も少数かもですね。韓国ほど儒教原理は働かないし。
    中国がアメリカと似ているといいますが、ちょっと分かるような気がします。

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